事業の成長と、持続可能な世界を一緒に

高知機型工業株式会社では、世の中で活躍している船、自動車、農業用機械、建設用機械船などの部品にあたる型や、建築用金物、アミューズメントパークなどの形をつくる最初の模型などを、金型、木型、シェルモールド(砂型)で作っています。また、中国に大連事務所を置き、中国各地で作った素形材(鋳鋼品等)を、大連、青島に集め、そこから船で輸送する素形材調達も業務の一部です。このような部品の金型を本社で作ったり、最初の設計段階から関わるものもあります。良い製品を作るために、設計段階から関わらせていただき、型製作や鋳造のノウハウを活かし最終素材まで作っています。

今回お話いただいたのは取締役副社長の北泰子さん。関西圏での商機について、また、北副社長さん自身が音頭を取って推進してきたSDGsの取り組みについてお伺いしました。

 

【北泰子副社長】

【北泰子副社長】

 

関西で好評だった独自技術

「2025年に万博が控えている関西圏での展示会や見本市には高知県や高知県産業振興センターの協力も得ながら、新型コロナウイルス感染症が流行する前は、必ず出席させていただき、高知機型工業の製品や技術を紹介させていただいていました。展示会で直接商談をすることは少ないのですが、弊社の取り引き先のお客様や、関係団体等からご紹介いただいて、お客様になっていただくことはあります」と北副社長。

そんな中で、高知機型工業のホームページを見て「ようやく自分たちが思っている製品を作ってくれそうな企業にたどり着きました」といってくれたのは、大阪の御堂筋で有名ファッション・ブランドのビル建築に携わる会社でした。そのビルはすごくデザイン性が高く、曲面のガラスを留める金具が必要だということで、形状や

鋳肌の美しさ、強度の問題もクリアしながら、デザイナーの希望に応えるものを提供しなければなりませんでした。そこで、高知機型工業の持つ、光造形品を応用した型不要の精密鋳造工法という技術で、図面段階のデータで、実際に鋳物の最終形状をつくり、あらゆる課題をクリアできることを確認していただき、とても喜んでもらえたそうです。

しかし、コロナは関西圏だけでなく、世界中で猛威を振るい高知機型工業もその影響を受け、この1〜2年の業績は落ちています。北副社長は「現在、関西圏の展示会などへの参加もぐっと減っていますが、コロナが終息すればもとのように参加して顧客を広げていきたい」と意欲的です。

 

大阪の有名ファッション・ブランドのビル

大阪の有名ファッション・ブランドのビル

 

SDGsの取り組み、太陽光発電を設置

北副社長がSDGsを意識し始めたのは4年前、ある会で隣に座っていた人がSDGsの丸いバッジを付けているのを見てからです。「お話をお伺いすると、その会社ではすでにSDGsに取り組んでいて、17の目標に関連させた表も後で送っていただきました。本当に早い時期に取り組まれていることを知ると同時に、はじめて自分自身がSDGsを意識して、こんな風にやるんだ、ということが分かりました」。

そこで、自社を振り返ってみると、すでに取り組んでいることもたくさんあったそうです。女性活躍や働き方改革、健康経営、そしてダイバーシティマネージメント、さらに、車の排気ガスを出さない運転の仕方など、いろいろ取り組んでいたことを、17の目標と関連付けていくと、ずいぶんと網羅されていました。そこで、残る課題について順番にやっていきました。

「その一つが自家発電用の太陽光発電です。太陽光発電を設置すると決めてから、香南市と防災協定を結びまして、避難所として弊社を活用していただけることになりました。電気の消費を削減すると同時に、自社の防災・減災、それから地域の防災に貢献できるようになりました。また、大型の蓄電池を2台導入しましたので、蓄電池の方からも電気は取れます。さらに、ガスも使っているので、大きなタンクがありますが、そこからも発電できるような発電機を持っています。そのほかに毛布、食べ物、飲み物も準備しましたし、大きな釜も買って炊き出しができるように準備しています。」と、北副社長は教えてくれました。

 

【太陽光発電を設置した本社工場】

【太陽光発電を設置した本社工場】

 

自販機の売上をテロ対策や紛争解決に

自販機の自社収益をNPO法人アクセプト・インターナショナルに全額寄付をしています。飲み物を社員が買うために自販機に100円入れると、約10%が自動的に寄付されるシステムになっています。アクセプトはテロを止め、紛争を解決するために、ソマリアなど大変危険な地域で活動しています。1番“貧困をなくそう”、4番“質の高い教育をみんなに”、10番“人や国の不平等をなくそう”、16番“平和と公正をすべての人に”など、なかなか企業では達成することが難しいところに貢献できるようになりました。サンガリアの自販機なので、サンガリア商事さんといっしょに、取り組みを進めてきました。

「今、社員全員がSDGsを理解し、推進するための組織づくりを進めています。昨年、専務が高知県主催で行われた慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史先生のセミナーをオンラインで受講して、これは取り組まなければならないと分かり、取り組みは一気に加速しました。それを見ていた社長が、自らSDGsのバッジをつけて、今年8月の株主総会では、今後はDXとSDGsを目標にやっていくと発表をして社員にも伝えました。社内セミナーを2回に分けて行い、社内での理解を進めて、今は社員一人一人が、会社としても、家庭としても、また個人としてもどのようにSDGsに取り組んでいったらいいのかを、自分の目標に落とし込み実行に移してくれています」と、北副社長が1人で始めた取り組みは、今では全社員に広がりました。

 

【NPO法人に自動的に寄付ができる自動販売機】

【NPO法人に自動的に寄付ができる自動販売機】

 

廃棄物を可能な限りリサイクルする

高知機型工業では、以前はただのゴミとして処分されていた段ボールの可能な限りのリサイクルを始め、産業廃棄物を大量に出していた部署を閉鎖し、再構築補助金を利用して、産業廃棄物をできるだけ出さない新システムを構築中です。目標としては8番“働きがいも経済成長も”、9番“産業と技術革新の基礎をつくろう”、12番“つくる責任 つかう責任”、13番“気候変動に具体的な対策を”を目標にしています。

北副社長は「生産過程で出る廃棄物はお金を出して処理してもらっていましたが、ゴミを極力出さない新システムを構築中です。また、削った削りカスが出ても、それを資源化できる形に持っていきたいと考えています」と、新しい取り組みに期待を寄せています。さらに「事業の成長と、持続可能な世界を一緒にしていくというのを、SDGs経営の最終目標として掲げています。そういった企業になることで、お客様に選んでいただける企業になる、社員の幸福度にもつながり、学生さんに選んでいただける企業になっていけると思っています」と北副社長は言います。

学生たちへのメッセージとしては「とにかく若いうちはインターンシップやボランティアなどのさまざまな体験をしてください。それは何も都会にだけにチャレンジのチャンスがあるのではなく、高知にも自分が目指している仕事ができる環境があると思います。どうしても東京や大阪での楽しさに目が奪われるでしょうけれど、人間らしさ、やりがいを考えると意外と高知にも自分に見合った仕事があるかもしれません。高知の企業を知ってもらい、高知で働くきっかけにしてもらえたら嬉しいです」と、熱く語ってくれました。

企業情報

設立1965(昭和40)年3月10日
資本金3,400万円
従業員数28名
事業内容各種模型製造及び素形材調達事業(⾦型、機械⽊型、樹脂型、シェルモールド、発泡スチロール模型、マスターモデル、鋳鋼品・鋳鉄品・ステンレス鋳鋼品(SC,SCW,FCD,AC,TI)、セミロストワックス・複合セミロストワックス・ロストワック、光造形、型不要の精密鋳造D.Q.C(デジタル・クイック・キャスト)